「綾瀬聖二くん、ねー。あのコ、美佳の学校にいたわよね?浩一くんに負けず劣らずのイイ男」
「な、なんで名前知ってんの?!」


あ!でも浩一さんとはもう面識あるし、知らないところでそういう話になったのかな。
っていうか、そのニヤニヤ顔どうにかなんないのかなぁ!


あからさま過ぎるお母さんの顔に、さすがに直視出来なくなった私はその場を立って、視線を逸らす。


「浩一くんもチハルも捨て難いけどねぇ。まぁでも、どのコ選んでも甲乙つけがたいところよね」


いやいやいや!捨て難いとかなに!
ていうか、なんでチハルの名前もちゃっかり上げちゃってんの?!


口をぽかんと開けてお母さんを見たら、目が合ってしまった。
ニッと意味深な笑みを浮かべたお母さんにドキリとする。


「いつの間にそんなモテ期になってたの?お母さん驚いたわぁ。でも正直美佳が羨ましい!」
「もっ、モテ期って!」
「いいわねぇ。若いって。お母さんが美佳くらいのときはどうだったかしらねぇ」


いや!もう、お母さんの話は今はいいから!
ていうか、この話題、すっごく落ち着かないんだけどどうにかなんないのかなぁ!
今日に限ってなぜこの時間に帰って来るのよー!

心の中では次々と浮かぶ言葉も、冷やかされた状態で上手くろれつが回らない。
なにも言えずにいると、お母さんは突然目を細めて思い出し笑いをし始める。


「な、なに……」


なんか胸騒ぎ……。
なに?これ以上羞恥心を煽られるようなことなんじゃ……!


「ふふっ。うん。あのね」


聞きたいような聞きたくないような。
でもそんなふうに迷っているうちにもお母さんは既に話し始めてしまっていて。

その話はあまりに衝撃で、耳を塞ぐどころか最後まで聞き入ってしまった。