ゆっくりと辺りを見回すようにしてる美佳を見つめる。
俺の視線に気付いた美佳は、度肝を抜かれたような顔をしてこっちを向いた。
そりゃ、そうか。
さっき〝初デート〟みたいな発言してたヤツを、こんなとこに連れて来たんだから、『信じられない』っつー顔して当然だ。
「あー……これは、その……」
「聖二のお父さんとお母さんがいるの……?」
「えっ……」
まっすぐに見上げられて言われた言葉が急すぎて、今度は俺のほうが驚いてしまう。
ジャリッ、と、敷き詰められた石を踏んで俺に近づくコイツは、俺がさっきまで考えてたようなことを思ってなんかいないと気付いた。
その顔は、怒ったりがっかりしたり、そういう負の感情を全く浮かべてなんかいなかったから。
「久々に会いに来たんでしょ?」
そういう美佳は、ものすごくうれしそうな顔をした。
……なんでお前がそんな顔すんだよ。……ヘンなヤツ……。
上辺でそう思いながらも、心の底ではそんな感想じゃなくて。
こんなことしかしない俺のことを、そのまま受け止めてくれてる気がしてすごくうれしかった。
「聖二、なんにも言わないから手ぶらで来ちゃったじゃない!」
「あ、ああ……。途中で思いついただけだったからな……」
「お花くらい持ってきたかったよ!」
そういいながらくるりと俺に背を向け、「どっちの方向?」と聞いてくる。
俺は目線で答えると、美佳はそれを受けて歩きづらそうな靴だってのに率先して歩いて行く。