ね、ねぇ……。ねぇ! 今! 今、なんて言った?!
グリンと顔をまた右に向け、緩く巻かれた髪を揺らして聖二をガン見する。

あまりに信じられなかったから、無意識に顔が聖二に近づいて行ってたんだと思う。
私の顔の威圧感に耐えきれなくなったのか、聖二はちらりと私を見た。


「あんまり近寄るなっ……」
「な、なによ!」


ふん、と鼻を鳴らして今度は逆側に顔を向ける。
流れる景色を見ながら、話題を変えた。


「……どこいくの?」


突然やってきて、そのまま車に乗せられて。
……こういうの、すごく、うれしいよ。


未だにドキドキとしてる緊張を隠すように、なるべく落ち着いた声を出そうと努力する。


「ていうか、どうしてあそこに私がいるってわかったの……?」
「…………三那斗が」


三那斗?

不思議に思って首を傾げていると、また信号で止まった車内で聖二が少し視線を落として続ける。


「三那斗が珍しく電話してきたから」
「電話?」


なにそれ。どういうこと?
あ。でも、確かに三那斗には別れ際に「お母さんの職場にいく」とは伝えたけど。
まさかあれだけのことで、三那斗が聖二に連絡したっていうの?なんで?


「アイツ……暑苦しいヤツだから。『不戦敗とかありえねえ』って怒られた」


……はぁ?
三那斗、なに言ってんの?


「それで……アキラを問い詰めた」


アキラに……?
ああ!だからさっきアキラもいたんだ!
アキラはきっと、チハルから仕事場について聞いてたから、場所とかある程度わかってたんだ。