「これってデートみたい……」


思わずいつもの調子で口から出してしまった。
それに気付いてももう遅い。


ハッとして運転席を振り向くと、ちょうど信号で止まったのか、車の揺れが収まるのと同時にゆらりと聖二の顔がこちらに向けられた。


「だ、だって!私たち、一般的な彼氏彼女とは逆パターン……!」
「逆?」
「ふ、普通……こういうデートを何回かして……そのあとに家に遊びに行ったりするはずなのに……」


そうだよ。
そういう話、よく聞くじゃない!

『今日、3回目のデートでやっと彼の家にいくの』みたいなやつ!!

そういうの皆無だし!


「……なるほどな」


だから……だから、緊張もするでしょ!
聖二と、デートというデートを経験したことないんだから!


無意識で、赤い顔で潤んだ眼差しを聖二に向けていた。
すると、ちらりと聖二の黒目だけが私を見て、それをすぐに逸らすとぼそりと言った。


「……そーいうカオすんなよ」
「……へっ……」


そ、そーいうカオって、どんなカオ?!
なに?!余程変な顔でもしてた?私!


頬を手で覆うようにして俯くと、右側からいつもよりもさらに小さな声が聞こえてくる。


「ただでさえ、お前の雰囲気がいつもと違うっつーのに」