「美佳が来るようになってから、聖二にぃは口数多くなった。ゼッタイ」
「それに、ほんのちょっとだけど、話し方とか雰囲気とか……柔らかくなったよな」


チビコウとミナトがぽつりぽつりと独り言のように話を重ねていく。


「……ベランダから部屋に戻って来ると、必ずと言っていいほど、ちょっと笑ってるんだよアイツ」


そうして最後にコウが言った。


「ベランダから……」


アキラがなにか思い出したように口にした。
そして、少し間を置いてからアキラも独り言を言うように漏らす。


「あのとき――……笑ってたのって……」
「……アキラちゃんも見てたことあったんだ。それはきっと、原因はひとつだけ」
「あのコ……?」


小さくこくりとコウが頷くのを見て、アキラは口を閉ざした。

……なんだか騙された気分だ。っていうのは言い過ぎだけど。
ぼくは、セイジとミカの関係はすぐにぐらつくものなんだ、って思っていた。

でも、本当はそうじゃなかった。
壊れやすそうに見えたのは上辺だけ。あの二人、極端に必要な内容の言葉のコミュニケーションが少ないんだ。
けど、気持ちの部分はしっかりとしていて……。

いきなり現れたぼくに、入り込む隙なんか、元々なかったってことか。