「なんで、おかしくもないのにいつも笑わなきゃなんねぇんだよ」


静かに聖二が口火を切った。
怒ってるわけじゃないのはわかる。でも、なんだか口を挟めるような様子でもなくて、私はそのまま口を結ぶ。


「セイジ。それってどういう意味だかわかってる?つまり、彼女といてもつまらないってことなんじゃないの?」
「これからも長い時間一緒にいるのに、無理して笑い続けることなんかできないだろ」


そんな様子の聖二でも、アキラは怖いものがないというような感じでばっさりと言い返す。
私はその内容に少し萎縮してしまったけど、聖二は全く動揺も見せずにそう続けた。


「これからも長い時間一緒」。
その言葉を聖二の口から聞けたことに、喜びを感じずにはいられない。

きっと、もう同じことを言ってはくれないかもしれない。
そのくらい、聖二からこんなことを聞けるなんて貴重だから。

私はアキラの存在を忘れ、聖二だけを無意識に見ていた。


「そういう気遣いが不要な、〝特別〟なんだよ」


不意に、アキラからその目を私に向けて言う。


……本当に、コイツってズルイ。

普段、全然表立って優しい言葉なんか掛けてくれなくて。
ちょっと小馬鹿にした態度が常で。

それで、こんなふうにごくたまに見せる熱のこもった目を向けて。
そしてさらりと口にする言葉の威力が半端無い。

もしこれをわかってて使い分けてるなら、一生聖二になんて敵わない。


「笑ってなくったって、どれだけコイツと一緒にいても俺は飽きないけど」