……チハル。いつも通りだった。
昨日の言ったこと、本当なのかな?「一緒にイタリアに」……って。

でも突然そんなこと言うなんて。
まさか、今までの彼女全員に同じようなこと言ってきたんじゃ……なんてことまで考えちゃう。

そのくらい、チハルは至って自然に私にそんなことを言うから。


昨日、そう言われたリビングに一人で突っ立って思い返す。
遠くで聞こえた、ピリリッという携帯の音で我に返る。そのまま部屋に戻って携帯を確認すると、送信主は早々にメールをくれたチハルだった。


「……はや」


本当にすぐにメールをくれたチハルに対して小さく笑うと、急いで登校の準備を始めた。




バスから降りていつものように教室に入る。
席についてカバンの中身を机に移動させてると、ドカッと隣の席にカバンが置かれて顔を上げた。


「お、おはよう……」
「……はよ」


明らかに……機嫌悪いですよねぇ。三那斗くん?
確かに私、昨日途中でなんにも言わずに帰っちゃったけど……まさか、それが原因?


びくびくとしながら、三那斗の動向を窺う。
カバンの次は、ドンッと椅子に腰をおろして、不貞腐れたように頬づえをつく。
それから、ジロッと私を見てぶつぶつと口ごもるように言った。


「完全に出遅れた……。浩兄にも、チハルにも」
「えっ」


二人の名前を聞いてドキリとする。


やっぱり、三那斗も大体のことは知ってるんだ。