「それで?明日は何時からフリーなの?」
渋々顔を元に戻して明日のことを考える。
そういえば、明日もまた三者面談日程だった。
てことは、午前授業……。
「明日……お昼までだ」
チハルに聞かれなかったら、ぼんやりしてる今の私なら6限目までの準備をして行ったに違いない。
チハルはその答えを聞いて、嬉しそうに私の肩に手を置いた。
「ホント?わー。それはタイミングいいな!」
「え?ねぇ。チハルは一体どこに……」
「ぼくの撮影見においでよ。目まぐるしいけどきっといい刺激になるよ。リフレッシュも出来るって!」
「えぇえ?!」
ちっチハルの現場?!そんなとこに私が行ってもいいの?!
ていうか、追っかけみたいな子たちに目とかつけられない?怖いんだけど……。
「あ。もしかして、ミカはもうそういう現場、見飽きてたかな」
「は?なんで……」
「ホラ。イツキとか夏実サンについて行ったりとか!」
「あー……いや、実は一回もないんだ」
元々そういう世界に興味がないっていうのもあったけど。
だけど、本当は、小さいときに線を引いたんだと思う。
その線の向こう側に私は入らないようにしようって。
それは別にお母さんやお父さんにそう言われたことがあるわけじゃなくて、自分なりに決めた小さな掟。
その線を一度でも越えてしまえば、夜、淋しくなったときに足がそこへ向いて行ってしまうかもしれない。
仕事をしてるお母さんに甘えてしまうかもしれない。
仕事を頑張るお母さんは私の自慢で、辞めてほしいって願ったことは一度もない。
でも、〝もし、お母さんが仕事をしてなかったら〟って想像したことは何度かあった。
そんな決まりを自ら決め、それを守って、今の歳までになったけど。
今ではもう、オトナになったし、淋しいとかって思わなくなった。それでもやっぱりわざわざ仕事場に行くような気持ちにもなったことがなかったし……。