「ミカ、明日は学校何時マデ?」
「明日?!そんな急に行けないよ!大体パスポートだって……!」
「Passport?え?」


私の言葉にきょとんとした顔で言ったチハルが、少し考えてから「ぷ」っと小さく吹き出した。


「ははっ。ミカ!またトンデモナイこと考えた?」
「えっ……ち、違うの?だって」
「Mh-まぁね。ぼくも故郷であるイタリアにミカを連れてって案内したいトコだけど。さすがにそこまでは」


肩を軽く上げて、手のひらを上に向けるようなジェスチャーをしながら『やれやれ』と言ったように失笑する。


そ、そんなこと言ったって!
チハルが言うことだし、イタリアだと思うのが普通じゃない!
じゃあ、チハルは一体どこに「おいで」って言ってるの?


恥ずかしい気持ちを抑え、口を小さく尖らせながらチハルを睨む。
すると、チハルは綺麗な手をスッと私の頭に乗せてきた。


「スネないスネない」


くしゃくしゃっと軽く髪を乱されるように頭を撫でられると、私の顔の赤さは引くどころかまた赤みを帯びていく。


もうっ。チハルはただでさえ容姿がいいんだから、それに加えてこの行動とか優しさとか反則だよ!


この照れる感情をどうしていいのかわからなくて、ぷぅと頬を軽く膨らませては、ふいっと顔を横に逸らした。

「ふふ」っと笑いを零したチハルは、まるで小さい子……妹でもあやすような穏やかな声色で言う。