『あの子も聖二と一緒にいて笑ってるところなんて見たことないわ』


不覚にも、アキラの言葉が突き刺さった。
俺が最近、もっとも感じていたことをストレートに言われてしまったからだ。


「あの子もそれ聞いて逃げて行ったのよ?その通りだ、って思ったから、なにも言わずに帰ったんじゃない」
「……ちょっとやりすぎだよ、それ」


勝ち誇ったように言って笑うアキラに突っかかったのは俺じゃない。孝四郎だった。


「コウシロウ。別にわたしはあの子をいじめたわけじゃないわ。事実を言ったまでなのよ」
「あのね?仮に本当のことだったとしても、だからと言って、人を傷つけていいことはないんだよ」
「よくわからないわ。なぜ、傷つくの?そうだと認めるなら、改善するように努めればいいじゃない」
「アホか!野球と違って、練習や努力すればすぐ結果が出るようなモンじゃねーだろーが」


孝四郎に飄々と答えるアキラに、今度言い返したのは三那斗。


「改善しようとするまででも、いろんなモン整理してかなきゃなんねーだろ。人の感情なんだから。まして美佳は人のことまで考えるタイプだしな!」
「そうそう!美佳は自分のことだけを考えることなんてしないんだよ」


珍しく三那斗と孝四郎が同調しながら言葉を紡ぐ。
その光景があまりに珍しすぎて、思わず呆気に取られてしまった。