この程度のことも迅速に解決できないなら。
傷心の彼女に寄り添って、弱みに付け込んで卑怯だと言われても、それをもチャンスとして逃さない。


敵対心を出すように聖二を睨む。それでも聖二はなにも発さない。
だけど、僅かに表情がこわばったのをおれは見た。


聖二も聖二なりに焦ってるんだな。それがわかっただけでも収穫だよ。
でも、ただ焦るだけじゃだめだろ。
おれはお前のアニキだからそういうことも考慮してしまう立場にいるけど……。


〝隣のアイツ〟は、そういうことまで考えちゃくれないぞ。


「コウちゃんいるならいいじゃない。チハルもあのコが気に入ってるみたいだし」


突然会話に入ってきたアキラちゃんが、おれと聖二を交互に見ながら続ける。


「さっきあの子にも言ったことだけど。セイジ、全然笑ってないじゃない。あの子も、セイジと一緒にいて笑ってるところなんて見たことないわ」


アキラに好き放題言われている聖二を見ると、核心をつかれたように表情を曇らせていくのがわかった。


……バカ聖二。
そんな言葉に惑わされてないで、もっと自信を持て。