「せっかく早くに来たのに二度寝しちゃうんだもの!ね。せっかくだから二人でどこかに行きましょうよ」


自然と手を首に絡ませるようにして上目遣いをしてくるアキラ。
それに、一概には嫌悪感のようなものを抱きはしないのは、たぶん、イタリアの根っからの振る舞いだというのと、昔から知ってる〝幼馴染〟という認識があるからだ。


「いや。遠慮しとく」
「どうして?だって今日は予定ないって言ってたじゃない」
「……違う。予定がないとは言ってない」


不服そうな顔をして口を尖らせるアキラの手を軽く解くと、距離を開けて言った。


「アキラが、明日どこか行くのか?って聞いたから、違う、と答えただけだ」
「はぁ?」


まだ納得がいってない様子のアキラを避けて、玄関に向かった。
すると、そこにあったはずのチハルの姿が忽然と消えていて、想像以上に焦燥感に駆られる。

思わずアキラをおいてある気進めようとしたら……。


「セイジ。わたしとつき合って」


背中から抱きしめられるようにされて、突然アキラがそう言った。


……マジかよ。
ここには孝四郎も三那斗もいるっつーのに、そういうの、そっちの人間は全然気にしないのか。
……いや、どこの国、とかじゃなくて性格の問題か。


兄弟二人の視線を浴びながら、アキラに告白をされるというこの状況。
一番面倒なパターンだ。


三那斗も孝四郎も、さすがになにも言わずに事の成り行きをすぐ傍で見守っている。
俺は盛大な溜め息と共に、アキラの手を緩めてくるりと向き合った。