居心地の悪い雰囲気なのはわかってた。
けど、そんな言葉が飛んでくるなんて予想も出来なかった。


「昔のセイジから変えてしまったのはあなたなんでしょう?」
「む……かし……?」
「わたしが小さい頃のセイジはもっと表情も豊かでたくさん笑いかけてくれたわ」


小さい頃の……聖二。
そんな話されたって、つい最近知り合った私にはどうすることも出来ないけど。
だけど、アキラの言う聖二が本当なら……。
私のせいじゃないにしても、私がそういうふうに変えてあげられないのもどうなの……。

その頃のお互いを知る二人なら……アキラなら、聖二にそんな豊かな表情を取り戻させることが出来るって言うの?


「あなたといて、セイジが笑うとこみたことない」


確かに聖二は普段から笑うことがほとんどない。だから逆に、それが普通で気にも留めなかった。
だけど、もしかしたらそうじゃなくて……。
隣にいる人が変われば、聖二も変わるかもしれない……?


目の前に立つ女性が自信にあふれていれば溢れているほど、私の自信なんてなくなっていって。
元々大きくもない自信なだけに、それが揺すぶられ崩壊するのは容易いもの。

ちらりと聖二の寝顔を見て胸が痛む。
そしてその場になんか居られない私は、アキラを見ることもせず玄関へと足早に向かった。

もつれそうになる足をどうにか靴に突っ込んで。
なんの涙かわからないものを堪えながら、ガチャリとドアを開ける。

廊下に出ても、当然すぐには気持ちは切りかえられなくて。