「あ、お金……」


あとで払えばいいか。
チハルがいなくなった方向に呟くと、「ふー」と息を吐いてもう一度空を仰いだ。

……今頃。聖二のやつは、のそっと起きたりしてんのかなぁ。
それこそアキラとどこか出掛けてたりして……。


「……いや。まさか!」


さすがにそこまでは……。


「な、ないないっ!!」
「なに一人で漫才してんだよ」


ぶるぶると頭を振っていると、背後から声がして大きく肩を上げた。
ぐりんと顔を回し振り向くと、そこにはあきれ顔で私を見下ろす男子。


「……み、三那斗っ?!」


見ると、ジャージにTシャツという姿。
きっと、このあたりをランニングでもしてたんだと予想がついた。
Tシャツの袖口で無造作に流れ落ちる汗を拭いながら、足を止めて私に言う。


「こんなとこで一人でなにやってんの」
「えっ、あ、そのー……」


チハルに誘われて、今ゴハン待ち……だなんて、なんとなく言いづらい。

そんな私の不自然な顔色に気付いたのか、三那斗がドカッと向かい側に腰を下ろす。
年季の入った木のテーブルに肘をついて頬づえをつくと、じっと真っ直ぐ見つめられる。


「な、なに……?」
「……いや。最近なんか、元気ねーっつーか変っつーか」


ギクリとしながらその言葉をなんとか笑顔で受け流す。