「う……だ、だって……チハルは有名人っぽいし……その……」
「でも、ぼくはぼくだし」
「いや……なんていうかそういう意味じゃ」
「あ」


たじろぎながら受け答えしていたら、突然不貞腐れた顔だったチハルがぱぁっとなった。


「ミカ!あの公園でpranzo(ランチ)にしよう」
「ぷらっ……え?!」
「ゴハン!すごい気持ちよさそうデショ!」


突然変わる表情は、仕事柄そうなるわけではなくて、チハルの元々の人柄だと思う。
たった数日だけど、チハルと一緒に居て自然とそう思えた。

木陰になった椅子とテーブルへ駆けより、大きく子供みたいに手を振って私を呼ぶ。


「なにかテイクアウトしてくる、ぼく」
「え!」
「ダイジョーブ!この近くなら道もわかってきたし。ミカはそこキープしておいてね!」
「きっ、キープ?」


まるで本当に小さい子みたいに。
『ここ取った!』みたいなそういうニュアンスに思わず吹き出してしまう。


「なんでもいー?」
「ああ、うん。私なんでもいいよ」
「OK!」


ポケットに手を入れながら、小走りしていく後ろ姿を見送る。