驚く様子も見せない俺に、孝四郎はますますイラついたのか、声を荒げて一歩こっちに近づいた。


「聖二にぃは平気なんだ……!」


今まで大して気にしなかったが、孝四郎がこんなに感情的になるのはいつ振りだというくらいだ。
家族の中でも飄々としている立ち位置だった孝四郎。
だけど、年相応の顔が出来るんだと、そういう意味で少し驚いた。

バン、と自室に戻っていった孝四郎を目で追ったのはおそらくアキラとアニキだけ。
そして、静まり返ったリビングで、すぐに開口したのはアキラだ。


「……なんでセイジ??」


背後から不思議そうな声が聞こえると、間を置いて、アニキが仕方なさそうに答える。


「――二人は、付き合ってるからね」
「う……うそ……!!」


俺の肩の上にあったアキラの手が、ぴくりと動いて離れていった。


「本当。……聖二、いい加減なにか話せ」


アニキがいつになく厳しい面持ちで言い放つ。

なにか、と言われても、それがなにから口にすればいいのかわかってたら、もうとっくにどうにか動いてる気がする。

……なんて、腹ん中でいろんな言い訳してるけど、本当は怖いのかもしれない。
隣から聞こえる笑い声を思い出して、勝手にチハルと比べてしまっている自分が臆病にさせる。

――美佳(アイツ)は、もしかしてチハルといた方が楽しいのかもしれない、と。