「へー。じゃ、今度は僕も一緒に見てよ」
「Oh!そんなこと言って!知ってるヨー。チビコウはベンキョウできるコだって。コウから聞いてる」
「……」
「ぼくがチビコウに教えること、出来なさそう」


軽く笑って言うチハルは、「ね?」と美佳を見る。
美佳は相変わらず戸惑って、「あー」とか「うーん」とか言ってるだけだ。

チハルはそんな美佳の反応を目を優しく細めて見ながら、くすくすと笑う。


――間違いない。


「じゃね。チビコウ」
「僕もっ……」


小さめの僕との身長差は15センチくらいあるかもしれない。
その長い足一歩で追い越される直前に、二人の間を邪魔したくて咄嗟に口を挟んだ。

けど――。


「……っ」


ちょうど美佳の死角になる位置だ。
それを知っててやってるんなら、相当キレ者だよ、このオトコ。
普段はちゃらちゃらへらへらして、そんな〝表情〟、微塵も見せない癖に――。


「いこっか、ミカ」
「えっ……あ、うん。孝四郎くん、またね」


あっという間に僕を置き去りにした二人の背中を、食い入るように見つめながら手を握りしめた。