三那斗のことを考えてると、背後からその主の声がしてびっくりした。


「みっ三那斗!お、おかえり!」
「おう。って、なした?帰るとこ?それともこれからウチくるとこ?」
「帰るとこだヨー」


私の後ろから、手のひらをひらひらと泳がせてチハルが明るく言った。
チハルに視点を合わせた三那斗は、急に不機嫌そうな顔と声を出す。


「……チハルにきーてねぇし!つか、この時間、二人で家にしてなんにもすることないんじゃねーの?だったらウチに……」
「これから寝るんだヨ」
「ねっ……??!」
「わー!チハルが!チハルが徹夜で!」


チハルの答えは間違いじゃないけど、聞き方によっては多大な誤解を招く言語!!
そう思って、慌てて否定したはいいけど……待って。
今、綾瀬家を出てきた理由と今答えた理由が違っちゃってるじゃない!私のバカッ!


「う・そ!これからぼくたち出掛けるの!行き先は別々だよ?」
「……嘘じゃねーだろーな」
「ぼくのこの目をみてよ」
「…………嘘くせ」


ふん、と鼻を鳴らしながら、チハルに近づけた顔を逸らして三那斗がドアノブに手を伸ばす。

「えぇー」と子どものように嘆くチハルに、三那斗が冗談混じりで言った。


「美佳になんかしたら、このバッド持ってすぐ殴りこみにいくからな!覚えとけよ」


……いや。なんか、半分冗談じゃないかも。
牙をむく三那斗を笑いながらチハルはやり過ごし、私たちは家に戻った。

パタン、と玄関が閉め、先に上がったチハルに続いて靴を脱いだ。
そのとき――。