「よし。じゃ、ミカ、悪いけどつきあってー」


グイッと腕を掴まれ、その力で席を立たされる。
まるで攫われるように、リビングから連れ出されると、遠くで孝四郎くんが口を開く。


「チハルッ!ミカを独り占めするなんて許さないからねっ」
「Ha-ha!一緒に住んでるぼくのトッケンってヤツだねっ。ごめんね、チビコウ」
「僕はチビじゃないっ」


玄関から出る寸前まで、リビングの孝四郎くんとそんなやりとりをしながら綾瀬家を後にする。
ひんやりとした廊下に出ると、さっきまで賑やかだったのが嘘のよう。
しんとした空間に、チハルと二人でいることに戸惑ってしまう。


「ち、チハル……?」
「ごめんね、ミカ。ぼく、今鍵持ってなかったからミカいないとココに帰れないし」
「え?」
「ぼく……眠くなった」


はぃ?! え? な、なに?!
じゃあ、眠たくなったから、鍵を持つ私を連れ出して帰って来たってこと?嘘でしょ?


「怒ってる……?」
「……別にいいけど」


本当は、ちょっと助かった、とも思ってる。
聖二とアキラが今でも一緒に入ることは正直、平気だとは言えないけど。
でも。あの家には浩一さんと孝四郎くんがいるし。それに、三那斗も帰って来るって言ってたし。


「あれっ。美佳じゃん!」