「あ、あー、そうなんだ? じゃあもうすぐ寝たいでしょ?私、静かにしてるから……」
「ダイジョウブ」
踵を返して自室に戻ろうとしたら、背中に鋭い声が届いて足を止めた。
いつものような柔らかい言い方とはちょっと違ってたから、びっくりしてしまう。
ゆっくり顔を回すと、静かに笑みを浮かべてるチハルがいてホッとした。
「……ダイジョブ。だから、行かないで」
い、行かないで……って……言われても……。
その意味がわからない分、そんなセリフを言われたことにドキドキする。
困ったように立ちつくしてると、チハルはポンポンと隣のスペースを軽く叩いて示した。
え! 隣に座れってこと?
いや、待って。意識してるのは私だけってわかってるけどさ!
「見る?仕事場のシャシン。夏実サンもいるよー」
「えっ?」
うきうきとこの間買ったばかりの携帯を手にして、ニコニコと操作をしてるチハル。
そんな姿を見て、ひとりなにを考えてるんだと脱力して、息を吐いた。
考えすぎだよ、ほんと。
チハルなんて綺麗な人を見る機会がたくさんある人なんだから、私なんかをどうとも思ってないって。
それに、このあっけらかんとした性格。
だからお父さんもお母さんも信用して、娘のいる家に居候させてるんだろうし!
「ふーん。どれ?」
「コレコレ」
「うわー。お母さんめっちゃ笑顔」
「デショ?いいカオしてるよねー」