ミカがベランダに出てから10分くらい。
ぼくは自分の部屋に篭って、雑誌を眺めながら小さく音楽をイヤホンで聴いてたんだけど……。

――気になる。

なんだろ? これ。
あれかな。しばらく誰かと住むなんてことしたことなかったから、同じ屋根の下にいる人の動向が気になるとか、そういうものなのかな。

ドアの向こうにいる人が、どうにも気になり目を向ける。でも、プライバシーっていうのの侵害かな、と思って目を無理矢理閉じてみた。

……だけど、結局は彼女の気配を全身で感じ取ろうとしてしまってるぼくは、最低かもしれない。

固く固く閉じた瞼の裏側で。
ふっと浮かんで出たのは、前に見た、聖二からの電話かと思ったときのミカの顔。

ああいう顔、ぼくにも見せてくれないかな。

ハッと目を開き、我に返る。


「……考えすぎ」


そんな想いは、テレビや雑誌の中で惹かれるときと同じもので、偶像にすぎない――はず。