小さくこくりと頷くと、も一度ポンと頭に触れられ、手が離れた。腕から少し顔を離し、覗き見るように聖二を見る。
そこには呆れたような、でも、〝仕方ない〟みたいな穏やかな感情を浮かべたような瞳。

その瞳と目が合ってしまうと、そのまま視線を逸らすことが出来ない。


「とりあえず、目標定まるまでは勉強してれば」
「は……?」
「……空いたときには、みてやるよ」


……え。「見てやる」って、もしかして、勉強を? 聖二が? 私に? まさか!


「ゆ……」
「?」
「雪が、降るかも……」


ぽろっと心の声を口にしたら、聖二が少しだけ眉をあげて、私のほっぺたを、ぎゅ、っとつねった。


「どの口が言うんだ」
「ほっ……ほめん、ひゃって(ごめん、だって)」


超めんどくさがり系の聖二が!
我関せずを貫くような聖二が!

私に時間を割いて、勉強みてくれるなんて言うんだもん!


「……アニキがいいっつーなら、べつにいいけど」
「そっ! そんなこと言ってないし!」


全力で否定してしまって、すぐに赤面する。あまりに恥ずかしいから、聖二の顔が見れない。

俯き黙る私。
そして、なんにも言わない聖二。

沈黙に耐えきれなくなりそうになったとき。


「……次の休みな」


夜空の下で聞こえたその言葉が、すごくすごくうれしくて。
聖二と別れて部屋に戻ってからも、その「次」のことで頭がいっぱいになるくらい。

こんなふうに、予期しないことを言ったりして、私を簡単に舞い上がらせるのは聖二だけだと思う。


「……少し勉強してから寝よ」


結局、机に向かって教科書を開いても、頭は聖二のことが大半を占めてて。
集中できるはずもなく、ただ時間だけが過ぎていった。