「お前は?」
「――え」
「なに話したワケ?」
――不意打ちだ。
ここにきて、この話題で、そんな目を向けないでよ。
三那斗とアキラの話を聞いたあとで、かなり落ち気味なのに。自分にはなんにもなくて、ほんと情けなくなる。
居心地の悪い話題。
だけど、世の中みんな、この道を通って行ってるんだよね……?私だけじゃないんだよね?
このなんとも言えない焦りと動揺。
焦燥感からくる劣等感。
なんなんだろう、私って。
ぎゅ、っと柵の上で手を握り。唇も一文字に結ぶと、俯くように睫毛を伏せた。
そんなとき――――。
ぽん、と感じる頭の重み。
「……なに、泣きそうなツラしてんだよ」
――反則だよ。
ここにきて、そんなふうに優しい手で、優しい声で。
普段は見せないその温かさに、簡単に壁を崩されちゃうじゃん。
「泣くことねーだろ。ガキ」
あああ。もう。かっこ悪すぎる。
羞恥の顔を隠すように、柵につけた腕に突っ伏した。
「……だ、って。ズル……い」
「は? 誰がだよ」
「……」
いつもそうだ。
優しい言葉じゃなくて、その手で、態度で助けてくれる。
「まー……不安なのはわかるけど。今はまだハッキリしないんだから仕方ないだろ」
そしてこんなときに、ほんの少し饒舌に。
その低めの声が、いつしかこんなに落ち着くものになってるんだ。