「……ミカ? まさかミカもお酒飲んだの?」
「え! の、飲むわけないでしょ!」
「カオ赤いから」
「!」


それは、チハルを見たから――なんて、言えないし!


「暑いからじゃない! それより、こっち!」


ごまかすようにチハルを横切り、私はお母さんの寝室のドアを開けた。
チハルがそっとお母さんを横たえると、ご丁寧にも、顔にかかった髪を丁寧によけていく。

あーもう!いちいちそういうのが、王子っぽくみえるんだよ!

別にいやらしい意味なんかないのに、気恥ずかしい私はドアの外で目を逸らした。


「やー夏実サン、ぐっすりだね」


足音もなく、急に私の隣に現れたチハルを目を大きくして見上げる。
チハルは、ニコッと、あの王子スマイルを私にお見舞いした。


「ミカと夏実サン、すごい似てるよね」
「そ、そうなのかなぁ?」
「今日だって。学校で二人揃ったのをチラッとみたけど。キョウダイみたいだった」
「〝姉妹〟ね」
「シマイ……ふーん」


口を少し尖らせながら復唱するチハルを置いて、リビングのものを片付け始める。
空き缶に手を伸ばすと、チハルも追って空いたお皿やゴミを手にした。


「今日。学校でどんなこと話したの?」
「え? 三者面談?」
「そうそう、ソレ」


私は空き缶をゆすぎながら、首を軽く捻って答える。


「んー……。進路を、どうするか、とか……」
「シンロ?」
「ほら。最近チハルが言ったばかりでしょ。『将来なんになるの』って。そういうこと」
「Aha-ナルホドー。で、なんて答えたの?」