「あーあ。セイジ、先行っちゃったねぇ」


セイジは、何を考えてるのか読みづらい人間だ。

べつにそういう能力があるわけじゃなくて。仕事柄、裏があるような人間とよく接する機会があるから、なんとなくそういう“人間性”みたいなのをみる力が培われたというか。

見た目は誰から見ても優しそうに、にこにことしている人が、腹の中ではどす黒いものを抱えていたりとか。
無愛想に見えて、実はすごく気がきく人とか。


そこいくと、セイジはそのどちらでもない。
にこにこと媚を売るでもなく、影で気を利かすとかもあまり感じられないし。

ある意味自分に正直にいながらも、その中身を見せないような。
だから、今みたいな挑発にも簡単には乗らないタイプだったし、顔色もわかるほど変えたりもしない。


「……ミナトの単純さが半分くらい、セイジにあればなぁ」
「なに人の名前言って、わけわかんねぇこと言ってんだよ！」


隣のミナトを見上げてクスッと笑った。