玄関を出たところで少し立ち止まって話を続ける。


「あいつ、結構成績よかったよ」
「…それはなんとなく…」


孝四郎くんは北高という県内でもトップクラスの高校へ行ってるし、浩一さんも役所関係に勤めているということは、やっぱり成績は良かったんだと思う。

三那斗もああ見えて、部活に専念してる癖に成績悪くはないみたいだし。

そう考えたら、聖二だって頭いいに決まってる。

大体あの雰囲気、物言い、態度なんかでそういうの出てる気がするし!


「夏が過ぎたら三那斗もそれなりに勉強しはじめるんだろうし、たまにウチで一緒に勉強したらいいかもね」


勉強をしに綾瀬家へ……。

そしたらこんな雑念なんか消え去るよね。
それに私一人じゃやっぱり限度がある気がするし―――。


「ありがとうございます。そのうち三那斗に話してみます」


軽くぺこっとお辞儀をしてお礼を言うと、浩一さんはにこにこと「全然。気にしないで」と答えて歩いて行った。

バス停へと歩きながら想像する。


綾瀬家で勉強……。

きっと孝四郎くんくらいだったらもしかしたら高3の勉強も理解してるのかもしれない。

三那斗も得意不得意はありそうだけど、得意分野は長けてるから教えて貰えそうだしなぁ。

浩一さんもなんだかんだでフォローしてくれそうな感じだったし…。


問題はアイツだ。

聖二も絶対、頭はキレるけど。
でも、スパルタそうで怖い…。っていうか、そもそも忙しいだろうし。


「…未だにどこかへ出掛けたことなんか、ないもんなぁ」


聖二と世間一般で言う“彼氏彼女”になってから、一度もそういうのがない。

私の独り言はバスのクラクションにかき消されていった。