さっきまで、美佳が立っていた場所に視線を落として、アイツの幻影を作った。

その幻影のアイツは、いつもよりも笑顔がない。


そんな顔をさせてるのは、俺自身だってわかってる。
そして、きっと、また笑わせられるのも――――……。


そう考えてたけど。

昼間、チハルが隣に戻っていってから聞こえてきたアイツの笑い声に、焦燥感を感じてしまった。


「あーあ……ダセ……」


柵に背を預けるようにして、逆さになった空を見る。

逆向きになった景色で、さっき見つけた星を探すのがなかなか難しい。
思ったよりも、手前にあったその星をようやく視界に捕らえると、俺は体を元に戻した。


きっと、大丈夫。


あの星が、見えても見えなくてもずっとそこにあるように。
アイツが俺の隣にいるのも、そんなふうに漠然と思っていた。