「じゃーな、友、黒斗」

「まった明日~」


 片手を上げてあたしたちとは別の方向に帰っていく弘樹と高志。


「ああ、じゃーなー」

「おう、きーつけて帰れよー」


 同じく片手を上げて挨拶し、あたし達も寮への道を歩いていった。




 前となんら変わり無い光景。

 弘樹や高志に対する黒斗の対応も、前とほとんど……って言うか全く変わっていなかった。


 あたしがそれでいいのかな? と聞くと黒斗は――。

「いきなり対応変わっても驚くだろ? だから徐々に変えていくさ」

 と答えた。


 まあ、確かにその通りだよね。

 徐々に変えていくって言ってるし、その辺は黒斗自身に任せよう。


 あたしは側にいるって約束を守るだけ。

 黒斗を好きなあたしにとっては、その約束は望む所。

 だから全然苦にならない。




 …………ちょっと訂正。

 苦にはならないけど、たまに側から離れたい衝動に駆られることがある。



 それは決まって二人きりのときに起きる。


 今日も、寮に帰って部屋に入るときそれは起こった――。