「あと1時間くらい走ったとこにあるサービスエリアで飯食うぞ」


「…」


「そこのフードコートのカツ丼は他のとこよりカツが分厚くて柔らかくて美味いんだ」


「……」


肝心なことは何にも言わないんだね。





暗闇の中で一人で泣いていた樹の姿と


さっきの恐怖と


イジメが始まってからずっとがまんしていたつらくて悲しい気持ちと…


全部がごちゃ混ぜになって、わたしは涙が止まらなかった。


「エッ…ヒック……エッ……エッ…」


こんなふうに声を上げて泣くのは本当に久しぶりのことで――



もしかしたらわたしは、ずっとこんなふうに泣きたかったのかも知れない。