僕は寂しい気持ちを紛らわしたくて、
人がたくさんいる場所に向かった。
いつもは寄り道なんてしないで真っ直ぐに家へ帰るけど、
この日だけは、持て余した寂しさに耐え切れなくて、
繁華街へと向かった。
だけど、僕には目的なんてない。
騒がしい雰囲気に触れるためだけに来たから、
何をしてよいのか、どこに行けばよいのか、
それすらも実はよく分からない。
すれ違う他人。
同じ人間のはずなのに、
その胸に感情が宿っているのか、それすらも疑ってしまう。
顔すら覚えることのできない人で溢れるこの街は、僕の心を慰めてはくれない。
そんなことはとっくの昔に重々承知している。
それでも僕は、この街に来た。
寂しさを、ごまかしたくて。


