【短編集】闇に潜む影



映画の内容なんて、ろくに覚えていない。


至近距離に座る彼女の肩が、息遣いが、


それを感じるだけで、


僕の心臓はうるさいくらいに高鳴ってしまっていた。


隣に座る彼女に聞こえやしないだろうか。


そんな心配ばかりして、映画の内容なんて頭に入ってこない。


ラストシーンに感動して涙する彼女の横顔は、


今まで見た何物にも勝る、「美」そのものだった。


僕は確信する。


彼女こそ、僕が愛すべき最初で最後の女性である、と。