私は、それらを黙って雑巾で拭き消したり、


ごみ箱に捨てたり、元の場所に戻したり、


聞かないふりをしていた。


いじめについて、親に相談することは怖かった。


いじめられているなんて言ったら、


悲しい顔をするだろうと思うと、口にすることはできなかった。


かといって、担任に相談することは、違う意味でできなかった。


「ちくったでしょ?」


いじめっ子たちが嗤いながらそう言う姿が簡単に想像できた。






気にすることは、負けだと思った。


逃げるのは、カッコ悪いと思った。


いじめは、無視していればなんとかなる、そう思い込んでいた。


だから、耐えた。


いじめに耐えた。


絶対に泣かなかったし、絶対に相手にしなかった。


でも、それは間違っていたと思う。


私は、我慢しなくてよかった。



逃げてよかった。



いじめられ続けなければならない義務なんて、無いのだから。