【短編集】闇に潜む影



「えー、それではご登場いただきましょう!どうぞ、お入りください!」


その声が合図だった。


拍手が響き渡るスタジオ、


まぶしいスポットライトに照らされるレッドカーペット。


私はその上を一歩一歩踏みしめる。


歓声が聞こえた。


この瞬間、間違いなく私は主役だった。


皆が、私を見ている。


羨ましそうに、私を見ている。


羨望の先に立つのは私。


この瞬間を、私は心待ちにしていた。


今日はこれだけの為に来たと言っても過言ではない。




皆が、私を求めている。


皆が、私が上に立つことを求めている。


私じゃなければダメなのよ。


沢山の人が、


私が上に立つことを望んでいるの。





だから、こうやって皆が私を見ている。


目を輝かせて。


嬉しそうに。


楽しそうに。


いつも、そう見られているけど、


これだけの数がいると、格別に気分が良い。


堂々と歩く私の姿は、皆の記憶にしっかりと刻まれただろう。