「あー、ったくやってらんねーよ!」


俺は勢いよく自分の部屋の椅子を蹴とばした。


同時に、それは勢いよく机の上に倒れ、


机の上に積まれた本や漫画、雑誌が雪崩落ちていく。


それを見ていると、ますますイライラが募っていく。


「なんなんだよ、どいつもこいつも」


今日は本当についてない一日だった。


朝から、正確には昨夜から、イライラしているのに、


学校に行ってもイライラすることがあって、


そんでもって、家に帰ってそれが爆発。


「ふざけんなよ、何様なんだよ!」


それらが自分の中でぐちゃぐちゃになって、


どうにもこうにもならなくなって。


俺は今、椅子やら壁やらにそのストレスを発散させる。


どすん、どすん、と部屋中で大きな音が響く。


あーーーーーー。


本当にムカつく!!!


殴りつけた壁は、自分のこぶしの大きさに微妙にへこんでいる。


その痕を見ると、自分の幼さを見せつけられたような気がして、


少しの罪悪感と、増幅する苛立ちが俺を微妙な気持ちにさせた。


あげていた右手を下に下げようとしたその時、


階下から聞こえてくる、今最も聞きたくないし、顔も見たくない人間の声が、


家中に響き渡る。


「いい加減にしなさい!」


せっかく拳を下したその瞬間に合わせたかのように叫ばれたその言葉に、


収まりかけていた苛立ちが、また俺の頭に血を登らせた。


「うっせーんだよ!このくそばばあ!!」


俺は自分の喉に疲労感を覚えながら、


財布と携帯電話をジーパンのポケットに入れて、


階段を駆け下りると、


玄関ドアを蹴とばして、家から飛び出て行った。


「待ちなさい!」


背中から聞こえた母親の怒鳴り声。


俺は聞こえないふりをして、そのまま全速力で夜の道を駆け抜けた。