【短編集】闇に潜む影




「でもさ、施設に入ってからの暮らしに不満はなかったんだ。


だけど、施設の友達のいない高校入ったら、


なんか・・・自分は違うんだなって、実感しちゃって。


皆には当たり前のように親がいて、家族がいて、家があって、お金がある。


私がどんなに努力しても手に入れることが出来ないものを、皆は持っていて、


・・・中には、持て余している人もいて。


その中にぽつんと、私みたいなのが存在している。


皆と私は、全然違う世界に住んでいるんだって、・・・分かっちゃったんだ。


どんなに頑張って生きていても、私に、・・・意味とか価値とか、


そういったものなんて無いって知った時から、


嫌になっちゃったの。何もかも。生きていることすらも、ね」


あはは、と私は笑った。


いつも、しているように。


高らかな笑い声が、赤い空に響く。


「なんか、笑っちゃうでしょ?」


私は笑いながら、隣で聞く彼に同意を求めた。


だけど、彼は、笑ってなんかいなかった。


当たり前と言えば当たり前だろう。


人の不幸な身の上話、普通の神経なら笑えない。


だけど、彼は、


笑うどころじゃなくて。


「・・・どうして?」


「だって・・・」


ぼろぼろと、涙を流していた。


「なぜ泣くの?」


涙を手首で拭っても、彼の目からはまた涙が溢れては流れ落ちていた。


「・・・君が、泣くから」