【短編集】闇に潜む影




「そっか」


その言葉は、私の予想に反していた。


彼はあっけなくそう返事をした。


私は驚いてしまって、まじまじと彼の横顔を見つめてしまった。


「・・・あれ、怒らないんだ」


私のこの言葉に、彼が私の方を向いて、不思議そうに首をかしげた。


「なんで?怒らなきゃいけない理由なんてある?」


内心、少し焦っていた。


悪い事をした子供が一生懸命言い訳をするように、


私はまくしたてた。


「いや、別に。


ただ、自殺なんて誉められたものじゃないし、


命を粗末にする行為だから、ほとんどの人はそんなくだらない理由で、


と思うのかと」


彼は少し考えた後、ゆっくりと口を開いた。


「・・・人には色々な事情があるでしょ。一概にダメなんて言えないよ」


私はその時、初めて隣の男の子の顔をきちんと見た。


優しそうな笑顔が、そこには浮かんでいた。


夕日のせいか、その顔は、とても端正で綺麗に見えた。


「そう。・・・そっか」


膝を抱えるために組んでいた両手の指をほどいた。


ゆっくりと、膝が伸びていく。


静かな、だけど気まずく感じない空気が流れる。