「いつになったら俺、満たされるんだろうな」
いつになったら俺の中の愛情タンクが満タンになってくれるんだろう。
満タンになったら、那智にだってもっと優しく出来ると思うのに。
性癖も消えてなくなるんじゃないかと思「人間ってのは貪欲なもんさ」
俺の気持ちを否定する鳥井は、独白に笑いもせず真顔で紫煙を吐き出す。
「人の欲は尽きない。
あれも欲しい、これも欲しい、生活を豊かにしようと物欲を抱くし。
金に溺れた奴はより金に溺れる。愛に溺れた奴はより愛に溺れる。
―…若旦那は欲望のすべてを弟に捧げてるのさ。
あと肌フェチだな。執拗に肌が舐めたいって、さっき言ってたし」
俺にはそう見えるねぃ。
鳥井は短くなった煙草を吸って一服。
「不幸に見えるか?」
今の置かれてる状況下を傍から見てどう思うか、俺は他人に尋ねる。
「だったら俺の方が不幸だ」
他人は笑声を漏らして、肩を竦める。
「鬼みてぇな雇い主と出逢っちまったし、怪我は負うし、借金返済まで道のりは長いし。
早く弟を引き取ってやりたいのに引き取る環境も作れない俺って超不幸。
ま、つまり俺の言いたいことは見方なんて各々ってことだ。
少なくとも俺はあんた等が羨ましい。
家族と常に一緒にいられるんだからな」
「じゃあ、弟を溺愛、支配、束縛している俺は異常に見えるか?」
「じゃあ、ギャンブルに溺れた親の借金を背負って裏社会に入ってる俺は異常か?
ヘッポコでもおりゃあ、金のために人の命さえ狙うんだぜ、若旦那」
「―…いや別に」
「んじゃ俺も同じ答えだ」
他人は他人、自分は自分だしな。
全員が同じ平和な道を歩むと思ったら大間違いだし。
どことなく人生に諦めたような顔で、力なく笑う鳥井は変わっていると思う。
親近感ってのか?
何か気持ちが通じ合うもんがある。
他人なのに、俺の心に鳥井の言葉が残る。
とにもかくにも鳥井は変わっている。



