「わーったわーった。好きなの頼め。食えない分は俺と鳥井で食べるから」

「は? ちょ、待ておい」


「けどご飯ものは食えよ。栄養バランスが偏っちまったら体調崩す。どーせ鳥井の奢りだ。高いの頼んじまえ」

「なッ…、おい、おい、おい」


「じゃあ兄さま、このステーキってヤツ食べてみても良いですか? おれ、高いから遠慮してたんですけど」

「頼め頼め。食えない分は俺等が食うから」


「テイクアウトできるカレーパン…買ってみても良いですか?」

「ああ、何でも好きなの頼め」


「ほ、ほんとにいいんですか」

「当たり前だろ、今日は奮発だ」

「俺が奢るんだっつーッ、イ゛―ッ?!!」


俺は向かい側に座っている鳥井の右の脛を思い切り蹴って、那智に何でも頼めと微笑する。

「兄さま好きー」

ぽわぁっと表情を緩ませる那智は、ご飯物のメニューを開いて嬉々としている。

俺はそれに一笑、んでもって顔を引き攣らせて脛を擦っている鳥井に冷然と言った。


「てことで鳥井、てめぇは何も頼むな。俺とてめぇは残飯処理係だからな。珈琲くらいなら許す。俺も頼む予定だしな」

「お前っ…ほんっと何から何まで鬼だな。俺に支払わせる上に、何も頼むな、で、残飯処理とか」


それでも人間か、お前?

情がないのかと俺に引き攣り笑いを向けてくる鳥井。

俺はシニカルな笑みを返した。


「てめぇ、那智にあんだけ怖い思いさせたんだ。償え」

「全治三ヶ月で償えたんじゃねえのかよ」

「あれで満足するなよ、阿呆が。それに弟の願いを聞いてやるのが兄貴ってもんだろ?」

「ンのブラコン…っ」

「ブラコンで結構。文句あっか? 表に出て相手してやってもいいぞ」