俺は体を引き摺って、這いながら、寝ている弟の隣に辿り着くと寝転ぶことに成功する。

小さな体を抱き締めて、俺はさっきは出なかった気持ちを、涙を溢れさせた。


「ごめん、守ってやる言ったのに…、那智ごめん…」


今度は守る、守るから。

だから…、必要としてくれ。那智。
 
 
嗚咽を噛み殺して弟を抱きすくめていると、「いたい?」蚊の鳴くような声が聞こえた。

目を開ければ、顔に生々しい痣を作った那智の姿。

ぼんやり目を開けてこっちを見つめてくる那智は、俺の頬を触ると、「イタイイタイとんでけ」子供らしい呪文を唱えてきた。


涙の量が増えた。


「那智ッ…」

「泣かないで…、泣かないで…、にーさまが泣いてると、おれも悲しいっ」


ボロッと那智が涙を零す。

それを見て、俺は笑って見せた。



「馬鹿…兄さまはなっ、てめぇにもらい泣きしたんだ。泣いてねぇよ。泣いてっ、ねぇから…」

「もらいなき?」

 
 
よく分からないと首を傾げる那智に一笑して、俺は弟の体を抱き締めなおす。

そして子守唄代わりの言葉を那智に向けた。