【唯SIDE】 「唯」 放課後の階段。 呼ばれて振り向くと、本宮先輩が微笑んだ。 先輩から声をかけてくれるたび、胸がきゅーんとする。 嬉しさを噛み締めながら見つめていると、隣に並んだ先輩が首を傾げた。 「唇、切ったの?」 「え……、あっ、はい……。 自分で噛んじゃって」 先輩には片思いしてるだけだし、後ろめたい事なんて何もないのに。 なんとなく目を合わせられなくなって、目を伏せながら頷く。 口だし、すぐ治るとは思うけど、昨日の今日だとまだ少し目立つのかも。