「…憧れ?」

「うん」



改めて『憧れ』、なんて口に出すとなんだかものすごく照れ臭い気持ちに襲われる。

それでも、麻子が真剣に聞いてくれるから言葉を繋げた。



「親父、すんげぇうまいんだ。帰ってから、いっつも1on1の相手してもらってる」

「毎日?」

「うん。…今日のシュートも親父に教わったって言ったろ?」



俺の言葉尻に被さるように、麻子の顔に優しい色が灯る。



「…素敵なお父さんだね」


「うん、すげえ親父だよ」



俺は力強くそう言った。



「でも、」



…もう一度、麻子に小石を蹴る。




「…でも一度も、勝てたことねぇんだ」


俺のその言葉に、麻子の歩みがパタリと止まった。





「…元が?」