「圭太じゃないか」

 不意に二人以外の声が圭太の名を呼ぶ。はっとして声がした方を見ると、坊主頭のかなり太った男が立っていた。

「ああ……やあ。糸田だ、友達、だよ」

 戸惑うわたしを見て圭太が言う。

 糸田。太っているのに糸田。申し訳ないけど面白い。

「こんなところで会うなんてね。女連れだし」

 糸田は佐恵の顔をのぞき込んできた。

「……こんにちわ」

 挨拶をしたが、糸田は何も言わない。声を出さず口の形が「へぇ」と言っていた。