優しい旋律

彼は、彼女に背を向けたまま喋り続ける。


「私は君を誇りに思う」


彼女の心の中の明かりが激しく燃える。


その場で力尽きていこうとするかのように。


「君と出逢えて、良かった」


一粒、二粒、涙は止まることを知らない。


「卒業おめでとう」


ゆっくりと下ろされる左手の薬指にはめられた指輪が、哀しく光る。


彼は静かにドアを開け、呟く様に言った。


「君の旋律は、今まで聴いた誰よりも優しかった」


沈みかけた日の光が眩しい。


言葉になれなかった想い達が、頬をつたって光の中へ、絶え間なく彷徨い落ちていく。


誰も拾い上げてくれないことを、知りながら。











静かな教室に響くのは、哀しく、切ない旋律だけだった。


暖かい春の風だけが、そのことを知っていた。