「聞かせてもらえないか?」


後ろを振り向く。


そこには待ち焦がれていた、先生の姿があった。


「・・・先生・・・」


スーツに身を包んだ先生は、腕を組んで、ドアにもたれるように、入口に立っていた。


昨日、彼女は部活の送別会の時、こっそりと先生に耳打ちしていたのだった。


ありったけの勇気を振り絞って。


『明日の放課後、一緒にピアノを弾いてください』と。














これが、最後の勇気である、そう自分自身に言い聞かせて。