雨音色

「そういえば幸花さん。あなたのご趣味は何ですか?」


彼は思いついた様に彼女に質問した。


実は藤木は、見合いの帰りに、牧とその妻晃子に叱られたのである。


趣味を知ることは相手を知る事。


それを知らずに自分の話ばかりするのではない、と。


「・・・絵を描きます」


彼女は少し顔を赤らめて答えた。


「絵?」


「そうです。草花とか、猫とか、人物とか、光景全体とか・・・」


「すごいなぁ。今持ってらっしゃったります?」


彼はそれがスケッチ画のようなものだと思っていた。


「いえ、今は持っておりませんが、私、絵を描く事が好きで、油絵等もするんです」


今度は彼が目を丸くする番だった。


「山内さんは、芸術家でいらっしゃったのですか?」


彼が素っ頓狂な声をあげた。


「いえ。そんな大層なものでは・・・。でも、いつか・・・」


「いつか?」


藤木が少し身を乗り出した。


「仏蘭西に行ければって、思っているんです。

ほら、先日、モネの絵の話、したではありませんか。

あの光景を、実際目にしたいなって。

それで、私も描くのが夢なんです。

同じ風景の、あの絵を・・・」


彼女が少しばかり目を閉じる。


その瞼の裏には、あの光景が浮かんでいるのだろう。


その姿を彼は見つめた。


同時に、ある言葉が脳裏をかする。


『運命』という一言が。