「・・・え、結婚?」
「そう。この前、お見合いをしたんだ。で、結婚することに決めた」
大学の講堂前を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り向いたその先には、一高以来の友人である藤木が立っていた。
突然の報告に、彼はただただ驚くだけだった。
大学を卒業し、助手として使われていた時代、
結婚して誰かを養うなんて、考えられもしなかった。
目の前の彼も、同じ考えだろう、そう漠然と思っていたが。
「しかし、この年で結婚とか・・・早くないか?」
知っている限り、この年で結婚する同業者は珍しい。
「関係ないよ。愛する人に出逢えたんだ。結婚するしかないじゃないか」
牧は一瞬、自分の耳を疑う。
今、目の前の青年は自分に平気で、自分では一生口に出来ないような言葉を、
いとも簡単に言った。
ここは欧州か、それとも亜米利加か、思わずそう尋ねたくなる。
「・・・だが、よくお見合いの話なんて来たな」
「いや、何だかとりあえず付き合いで見合いをしてくれって頼まれたんだけど」
ますます耳を疑う。
それでなぜ、結婚へ?
口にはしなかったが、気づいていたのだろう、
彼はいつもの穏やかな笑みを浮かべて、言った。
「出会って、直感だけど、思ったんだ。この人とずっと一緒にいたいって」
柔らかい緑の芝生が、穏やかな風に吹かれて、
ゆらゆらと揺れる。
温かくて、心地よい風だったことを、牧は何故か良く、覚えていた。
「そう。この前、お見合いをしたんだ。で、結婚することに決めた」
大学の講堂前を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り向いたその先には、一高以来の友人である藤木が立っていた。
突然の報告に、彼はただただ驚くだけだった。
大学を卒業し、助手として使われていた時代、
結婚して誰かを養うなんて、考えられもしなかった。
目の前の彼も、同じ考えだろう、そう漠然と思っていたが。
「しかし、この年で結婚とか・・・早くないか?」
知っている限り、この年で結婚する同業者は珍しい。
「関係ないよ。愛する人に出逢えたんだ。結婚するしかないじゃないか」
牧は一瞬、自分の耳を疑う。
今、目の前の青年は自分に平気で、自分では一生口に出来ないような言葉を、
いとも簡単に言った。
ここは欧州か、それとも亜米利加か、思わずそう尋ねたくなる。
「・・・だが、よくお見合いの話なんて来たな」
「いや、何だかとりあえず付き合いで見合いをしてくれって頼まれたんだけど」
ますます耳を疑う。
それでなぜ、結婚へ?
口にはしなかったが、気づいていたのだろう、
彼はいつもの穏やかな笑みを浮かべて、言った。
「出会って、直感だけど、思ったんだ。この人とずっと一緒にいたいって」
柔らかい緑の芝生が、穏やかな風に吹かれて、
ゆらゆらと揺れる。
温かくて、心地よい風だったことを、牧は何故か良く、覚えていた。