浮遊感のみが全身を支配していた。

 しっかりと両目を開けているつもりなのに、眩しさで何も見えない。

 何かに追われている感覚があった。だが、身体はピクとも動いてくれない。

 ふと、

 これは現実の世界ではない……

 と思った。

 私は……

 確か私は撃たれた筈……

 銃弾が身体にめり込んで来る衝撃を記憶している。

 痛みは感じなかった。

 ゆっくりとだが、少しずつ意識も覚醒しつつあった。

 しかし、肉体はまだ眠りを欲しているようだ。

 頭痛が襲って来た。

 全身に不快感が走る。粘つく感覚が全身を覆い、自由を奪って行く。

 薄っすらと周囲の景色が見え始めて来た。

 天井から赤い液体のパックと、透明な液体が入ったパックがぶら下がっている。

 鼻から喉にかけて違和感を覚えたのと同時に、はっきりと自分の居場所が判った。

 病院だ……。

 声を出そうと必死に叫んでみたが、無音の世界ばかりが広がっている。

 白衣を纏った人間が、何人も自分の周りで動き回っていた。

 顔が近付いて来た。

 か、加藤さん……

 声にならない。そして、再び三山の意識は途絶えた。