「ねぇ、沙耶香知ってる?」 栗田は、なぜか両手に黒い皮の手袋をはめていた。 「オルフェウス、ギシリア神話の神の話しを」 「……知らない」 「マクベスを知っているから、話しができると思ったんだけどな」 栗田は残念そうにそう言い、皮手袋の手を握ったり開いたりした。 その度にギュッギュッと皮の鈍い音が聞こえてきて、沙耶香は顔をしかめた。