しかし、俺は途中で立ち止まってしまった。
立ち止まらざるを得なかった。
時代を経てすっかり変わってしまった町並みからぶわりと突風が吹いてきて、同時に視界があの頃……1940年代の光景が蘇ったのだ。
いつもの穏やかな光景ではない。
真夜中、家々には灯りが点いている。
空襲警報はないようだ。
しかし空には敵国のB-29。
これはまずい。
なぜ警報は出ていないのか。
爆撃は開始され、町から次々に炎が上がる。
人々が逃げ惑い、しかし炎に包まれていく。
爆風に火の粉も飛ばされ、まるで地獄絵図。
町は焼け野原になった。
この土地が霊になった俺に伝えたかったことは、つまり。
花枝はこの空襲で死んでしまったということだ。
俺の華々しい死は、全く花枝の明るい未来になれていなかった。
命まで捧げたというのに、これ以上の絶望はない。



