寺を出た瞬間、俺はまず時代の変化を感じた。
馴染みのあった光景はすっかり色を変えてしまって、まるで世界が変わってしまったように思えた。
長いこと寺に居ついていたのだ。
それは仕方ないことかもしれない。
それでも俺は、花枝に会いたい気持ちが抑えられなかった。
少女に憑いているという実感を得ていなかった俺は、寺の階段を下り終えたところで走り出した。
「こら、奈緒! どこ行くの?」
俺が走り出すと、少女も走り出す。
「わかんない。でも行かなきゃ」
花枝の家はここからは遠くないはずだ。
すっかり色は変わってしまっているものの、道はそんなに変わっていないようだ。
「奈緒ー!」
母親が困って追いかけてくるが、俺と少女はひたすら走った。



